ひととなり。声の仕事という職種はそういうものが強く出る職業かもしれない。
そのジャンル内には現在だと比較的スポットが当たりやすい声優という職業があるが、それはごく一端にすぎない。司会ならテレビ、舞台、イベントと幅広い。ナレーションもYouTubeやコマーシャルと活躍範囲が大きく広がっている。解説は企業動画や読み聞かせのコンテンツ、製品発表会なども。スタジオで収録するものもあれば現場でライブということもある。あまり表に出てこないが幅の広い職種なのだ。

現在音声コンテンツは今後ますますそのニーズを大きくしていくと言われている。テレビの視聴時間がYouTubeなどのインターネットコンテンツにその時間を奪われるようになってから久しい。視聴というのは文字通り目を奪われるコンテンツなので「ながら」がしづらい。ところが音楽、音声は他のことをしながらのコンテンツ消費が可能なため大きな期待がされている。事実、聴取の形はさまざまとなったが「ラジオの復権」という流れはもうずいぶん太くなってきていると感じる。
Googleマップ、ナビゲーションモードでの音声案内のはなし。Googleマップの日本語音声案内はフリーアナウンサーの野口美穂さんが声を担当していたが、2016年の春に音声合成に一度取って代わられた。その後あまり間を置かずに元に戻るということがあったのを覚えている。プロダクトフォーラムでGoogleの社外でのいろいろな意見が飛び交ったと聞いた。その後また2019年に音声合成に変わってしまったが、いまだ野口美穂さんのイメージが強く残る人は多い。ニュアンス、雰囲気というものには価値がある。

ナレーションなどを生業とするわたしの友人も同じような体験、声で覚えてもらえる面白さを体感したという。かなり昔、とある地方のローカルCMの声を当てたのだがその後その地方での別の仕事で「実はあのCMの声は、、」と正体を明かしてそのセリフを口にすると誰もがすごく盛り上がったり喜んでくれたるということが未だ多いという。
プロダクトもそうだが、そのプロダクト、その料理、いろいろなものの後ろに見える人の想いや情熱のようなものがなければ記憶には残らない。人の声などその最たるものではないだろうか。